白昼夢
遠く、北のほうから風を受けた。
シエラは目を細め、グラスランドのほうへ向く。
「ふむ、また一人いなくなったようじゃな。」
人と別れるのには慣れはしない。
何人もの人と別れようとも。
何人もの真の紋章の持ち主にも会ってきた。
共に同じ時をすごせるかと思ったが、一人、また一人と消えてゆく。
「わらわは最後まで見届けようぞ。」
世界の終わりまで。
例え灰色の世界が待ち受けようとも。
すべてを覚えたまま、終焉を見届けよう。
ほんの15年前のことを思い出し、シエラは目を細めた。
◇◆◇
ほぼすべての者が歓喜に沸いていた。
ここの軍主と一部のものたち以外。
シエラは石版の前にいつもの小僧っこがいるのを見つけた。
「お主はこれから、どうするんじゃ?」
「レックナート様の元へ元に戻りますよ。」
何ぜそのようなことを聞くのか分からないという風にルックは肩をすくめる。
「ふむ。あれは、あやつらが望んだ結果じゃ。」
「何が言いたいんですか?」
「余計な気は回すなということじゃ。」
なんとなく、予感があった。
じっと見ていた小僧っこの目に宿ったものに見覚えがあった。
「お年よりは説教好きというのは本当のことのようだ。」
「ふむ、どうやらわらわを怒らせたいようじゃな。」
結局はそのまま紋章戦になり、慌てて静かなる湖を唱えられ、それでその時は終わった。
今となっては過去のことだった。
たくさんの過去の一つにしかなり得ないものだった。
「わらわはまだまだ生きたらんからのぅ。」
そっと、シエラはささやいた。
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