英雄


もう、ほぼ、あいつの望みは潰えたはずである。
それでも、あいつはまだ、立ち止まらない。

なぜかは分からない。

ヒューゴは最後の戦いに望むことにした。
そこで、誰が行くかで、問題になった。
自分とゲドとクリス、そして、行くと主張した、フッチとビッキー、そしてトーマス。
サポートにはジーンさんに入ってもらった。

ササライに入ってもらうつもりだったのだが、3人がどうしても行きたいというので外れてもらったのだ。
力でいったら、真の紋章を持っている者が行く方がいいのだろう。

それでも、わだかまりがあった。
ゲドとササライはハルモニア、クリスはゼクセンの連中である。

それでも、最善だと思う人を選ぶことにした。

だから、3人名乗り出てきて、そして、ササライが身を引いてくれたことにヒューゴは少しだけほっとした。

そして、あいつの前に立った。

その時、トーマスがあいつに声をかけようとした。
何を言おうとしているのか分かっている。

俺はその前に声をかけた。
「真の紋章は俺たちの元に戻った。降伏してくれ。」

炎の英雄として、俺は声をかけた。
最後まで迷っていたけれど、俺は英雄の役を受け入れることにした。
だから、あいつのしたことは許されないけれど、俺はあいつに、降伏勧告をすることにした。

◇◆◇

ヒューゴは強い目をしていた。
そして、あいつらのように、静かな目でこちらを見ていた。
敵であるルックの方を。

「君は、炎の英雄としてきたのかい?」
その問いにヒューゴは頷いた。
英雄に勝てるわけはない。それが運命だ。
それでも、これで、もし勝てば運命に逆らうことができる証になる。
その一縷の望みをかけ、ルックは降伏勧告に首を振った。

◇◆◇

そして、運命は廻る。
結局、ルックは勝てることなく、負けたのだった。

崩れゆく遺跡の中で、ヒューゴは迷いなくルックに手を差し出した。
ルックはその手を取らなかった。

崩れる中、遺跡がルックとヒューゴの間を分けた。
ヒューゴはクリスに強制的に手を引っ張られ、この遺跡を抜けた。

かくして新しい英雄は生まれたのだった。


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