過去の妄執
坊→ティル、2主→リオウ、4主→カイ
テッド、ルックは、リオウ、ティル、カイの交易の旅に付き合わされていた。
三人とも、大の交易好きで、決まって付き合わされるのはテッド、ルックである。
しかも、交易品を落とすモンスターがいる道は歩く。
そして、あらかた狩りつくされるのである。
「変な気配がある。」
ルックは立ち止まった。まがまがしい気配を感じたからである。
テッドとティルも、立ち止まる。
リオウとカイは、あまり感じとれなかった。
「この辺りで、変な報告があったんですよ。」
リオウは思い出したように言う。
「行方不明者が大量に出たから調べてくれって報告があったのに、すぐそれは、間違いだった、って来たんです。」
その言葉に、ルックとテッドは考え込む。
ティル、リオウ、カイは人の気配を感じ、警戒した。
そこへ、青年が出てきた。
「おや?村に来たお客さんですか?」
「あ、たまたま通りがかっただけですけれど。」
リオウはニコリと言う。
「なら、よっていきませんか?」
青年の浮かぶ笑顔は、どこか作られているような笑み。
操られている、ということが、すぐ分かる。
全員警戒は怠らなかったが、どうやら囲まれたようである。
広い範囲から大量に来られたら、逃げられるすべはない。
「ついてきてはいただけませんか?」
「それは、誰に対するお誘いですか?」
「この人以外は。」
そう言って青年は、テッドを示す。
テッド以外は、全員、真の紋章を持っている。
顔を見合わせ、ティル、カイ、リオウ、ルックは、誘いにのることにした。
今、叩くのが、一番得策だろうと。
「テッド…。」
「俺も行くぜ。」
ティルはテッドを帰したがったが、結局テッドもついてきた。
一番大きな屋敷に、5人は連れられてきた。
扉を開けて、屋敷に入ると妖しい笑い声が聞こえてきた。
「真の紋章を渡してもらおうかね。」
ティル、テッド、ルックには聞き覚えがあった。
ウィンディ、いや、彼女の妄執がこの状況を産み出したのだろう。
「断る!」
リオウは、大声で言った。
次にカイが首を振る。
「渡せないよ。」
「これは、大切なものだから。」
「なんで、あんたに渡さなくちゃいけないんだい?」
ティルとルックも否定する。
「ふふふふふ、なら、力ずくで奪うまでだよ。」
ウィンディが指示すると、襲いかかってきた。
「彼らは…。」
「操られているだけだ!」
カイの問いにティルは声を上げる。
「ブラックルーン。支配の紋章だよ。」
ルックは吐きすてるように言った。
テッドとルックが詠唱をしだした。
ティルは二人を援護し、リオウとカイは、襲いかかってくる人を殺さぬようにしながら、ウィンディに向かう。
カイが切りかかったが、それはすり抜ける。
「ふふふふふ。」
ウィンディの笑い声がする。
彼女は実体ではなく、妄執である。
「テッド!」
ティルの声を聞きつけてカイはそちらを向く。
テッドはルックを蹴りつけ、弓をティルに向ける。
ブラックルーンの支配がまだ残っていたのである。
過去を思い出し、ティルは一瞬、止まってしまった。
そのせいで、襲い掛かってきた攻撃を避けることはできなかった。
「くそっ。」
そういいながら、テッドはティルをはずして矢を打つ。
しかし、それはリオウの方へ飛ぶ。
カイは思わず、庇っていた。矢が、肩に刺さる。
「カイさん!」
リオウは声を上げる。カイは矢を引き抜いた。血は流れるが、刺さったままでは邪魔である。
そうしている間にも、大量の人が襲い掛かってくる。
「とりあえず、合流しよう。」
その言葉に、リオウは頷いた。
テッドの矢が横を抜ける。カイとリオウはルックとテッドとティルの元へたどり着いた。
ティルは二人を守るだけでいっぱいである。
それでも、違う方へ動こうとするテッドまで、守れない。
しかも、ティルもリオウも疲れがたまり始めていた。
相手がどこにいるか分からないため、魔法が有効な手段だが、ルックは倒れており、テッドは操られ、ティルとリオウにはその余裕がない。
しかもティルはソールイーターをテッドでいる傍では使おうとしないし、リオウは魔力不足である。
そして、テッドが操られ、ティルが守りきれる範囲から外れる。
そのテッドに、操られた人々は襲い掛かってきた。
カイはとっさにテッドを庇った。再び、鮮血が宙を飛ぶ。
カイは詠唱しだした。攻撃されるのも厭わない。
「わが身に宿る罰の紋章よ・・・・」
カイの声に呼応して、罰の紋章が発動する。
次の瞬間、襲い掛かってきた人々は糸が切れたように崩れ落ち、ティルたちの傷はふさがった。
「消えたみたいだね。」
ルックはあたりにまがまがしい気配がなくなっているのを確認して言った。
「わりい。」
「ごめん。」
テッドとティルはカイに謝ってくる。テッドはリオウやルックにも平謝りである。
「いいって。それより、傷はなくなったけど、二人とも顔色悪いし、休憩しよう?」
カイはテッドとティルの顔色を見て言った。
テッドもティルも青ざめている。
「ま、トラウマだろうからね。」
そう言いながらもルックも二人を気遣っているようである。
「じゃぁ、見つかる前に、ルックのテレポートで帰りましょう。」
「なんで、僕が。」
「あ、それは助かるなぁ。」
「ありがとう、ルック。」
「宿についたら、事情は話してもらうからね。」
そうして、5人は一番近くの村の宿へ向かったのであった。
Zeroさんだけお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました。
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