隠された物語
「8年ぶりぐらいだっけ?僕もよくよく飛ばされるな。」
そう言って、シキは大きく伸びをした。
「150年前の言葉の癖なんて、僕が分かるわけないと思わないかな。」
シキは目を細めた。
「あの後、必死にクールークについて調べて、昔の国って知ったときは驚いたなぁ。」
あの時は調べものがある、といって書室に篭ったのだ。
それ以後も、群島諸国や、クールークの資料は集めていた。
それでも半信半疑だったが、群島諸国出身の商人にあっちの癖の言葉で話しかけてみた時、時間を飛び越えたことを確信したのだ。
「坊主、ずいぶん古めかしい言い方するんだなぁ。しかも、紋章砲やらなんやら、ずいぶん昔になくなったもんの話ばっかり聞きたがるな。」
あれから、またビッキーに会って、しかも、あの後の世界に来れるとは思わなかった。
運命なのか偶然なのか・・・・。
◇◆◇
ラズリルという町に来たときふと、見たことがある顔がいたような気がしてシキは振り返った。
一人の青年もこちらを向いたようだった。
一目で見て分かった。
キリルだ。
ただ、様子がおかしい気がした。
「どうかしたのか?」
シキはキリルに声をかけた。
「あ、覚えてたんだ。忘れてるかと思った。」
キリルはシキに笑いかけた。ただ、暗に、聞かれたくない内容があるという態度だった。。
「あの頃は、ふさふさなんて、って馬鹿にしてたけどね。今じゃこの通りだよ。」
「まぁ、少しずつ慣れさせていけばいいんじゃないか?」
「君は強くなったようだ。」
「いろいろあったからね。」
ふと、シキは右手がうずいたような気がした。
「どうかしたのか?」
その微妙な反応を見咎めてキリルはシキに尋ねる。
「いや。」
シキはそれ以上踏み込ませなかった。
「そういや、時間あるなら、キャラバンによってかないか?」
「うん、しばらく時間あるし、よらせていただくよ。」
こうして、二人は久しぶりの邂逅を果たしたのだった。