好敵手


「外に行ってきてもいい?」
キリルのその言葉にウォルターは頷いた。
「気をつけて行ってくるんだぞ。」
ハーイと元気よく返事をして、キリルとシキは駆け出した。

それをアンダルクは慌てて追ったが、追いつけなかった。とは言っても行き先は見当がついていた。

二人が向かった先は裏通り。
もさもさが出ることもあって、人通りは少ない。

「行くよ。」
そのシキの言葉と共に2人は駆け出した。
もさもさを倒しながら裏通りにある少し開けた空き地のようなところへ向かう。

二人は同時にそこに着いた。
「15匹。」
「15。」
キリルとシキは空き地に着くなり倒したもさもさの数を言い合った。
「引き分けか。」
「もう少し、あのもさもさが近くにいたら倒したのに。」
キリルもシキも悔しそうだ。
これまでの成績はお互いに3勝3敗7引き分け。
実力は拮抗していた。

と、キリルは空き地に新しい宝箱のようなものがあるのに気が付いた。
「おい、あれ。」
「何だろうね?」
シキは興味津々、といったようにソレを眺め、耳を近付けた。
「音がする。」
キリルも耳を近付けたる。
「生き物っぽいな。」

と、そこへチンピラっぽい男がきた。
「おい、ソレはなんだ?」
と、宝箱を指差す。
シキはキリルにニヤっと笑った。
「ここにあったんだ。これ、おじさんの?」
キリルもその意図をくみとり、
「ねぇ、おじさんの宝物みたいな。」
と、尋ねた。その男の宝箱でないのは、百も承知だ。
男にその箱を開けさそうとしたのだ。

何かあったら逃げられるように準備して。

「ふん、いいだろ。見せてやろう。」
男はいい気になり、もったいぶって言った。
そして、宝箱の蓋を重そうに開ける。

光が漏れたと思ったら次の瞬間、金色のふさふさが現れた。

男は慌てて攻撃する。
その攻撃は当たったが相手は堪えていないようだ。

「来る。」
キリルとシキが後ろに下がった瞬間、もさもさは氷の息吹を放ってきた。

「ぎゃあ。」
その魔法は男に直撃した。

キリルとシキは顔をみあわせた。

男を見捨てれば、逃げられる。

しかし、一応あるらしい良心がうずく。
しかも、男はかなり体重がありそうだった。

男に向かったもさもさをシキが棍で受け止め、キリルが男を蹴る。

「重い。」
シキがそう叫ぶと、
「こっちの方が重い。」
とキリルが返す。
「しょうがないじゃん、君の方がでかいんだから。」
そう言いつつも、2人は息を合わせ、もさもさを牽制しながら、男を蹴り、遠くにやる。男が箱から離れさせ、キリルは宝箱の重い蓋を半ば殴るように閉めた。

「キリル様、シキ君大丈夫でしたか?」
そこへアンダルクがやってきた。

「大丈夫だよ。これぐらい。」
キリルは平然と答える。
「どっちが先に倒せるようになるか競争だね。」
シキはキリルに囁いた。
キリルもニヤリと笑う。

その日から二人はより一層、稽古に励むようになった。


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