わがまま
坊→シキ
クレオは待ってて。
僕は絶対帰ってくるから。
ここは僕の家なんだし、絶対帰るよ。
そのかわり、わがままってわかっているけど、帰ってきた時には「おかえり」って言ってほしい。
何かを探さなきゃいけないんだ。
何かは分からないけど。
…ごめんね。1人にさせて。
◇◆◇
「坊っちゃん、おかえりなさい。」
クレオは3年ぶりに帰ってきたシキに微笑みかけた。
「ただいま。」
シキもクレオに笑いかける。
「探しものは見つかりましたか?」
「ごめん、まだなんだ。」
それは、シキが再び旅立つことを意味している。
「でも、しばらくはここにいるよ。」
少しだけ悲しそうな顔をしたクレオにシキは慌てて言った。
「…ありがとう、待っててくれて。」
そう言って、そっとシキはクレオに抱きつき、顔を埋めた。
それは、昔と変わらない泣き顔を見られたくない時のシキの動作だった。
もっとも今は泣いてはいないが。
クレオはシキの頭を撫でた。
決して自分を越すことのない彼。
そして、裏腹に心は急な成長をしなくてはいけなかった彼。
そんな彼の帰る場所でいることをクレオは誓った。
◇◆◇
たくさんの大切な人を失った。
その苦しみはいつもある。
でも、待ってくれる人がいる。
そのことがとても嬉しい。
彼女もたくさん、大切な人を亡くした。
幸せになってほしい、とは思っているけれど、まだ、もう少しだけ僕の帰る場所にいて欲しい