深まる溝
どこから湧いてきたのか、大量の帝国兵が、シキ、サキ、ナナミを襲う。
階段の上まで登った時、シキは、サキとナナミに先に行くように言った。
「置いては行けません。」
サキはたくさん来る帝国兵を見ながら言う。
「大丈夫だよ。ここは迎え打つにはちょうどいい場所だ。君達がしなければならないことは、同盟軍の旗を掲げることだ。それで、この戦いは終わる。」
サキは下唇を嚼んだ。
「絶対、絶対、一緒に帰ろうね。」
ナナミはシキの手を握って言った。
◇◆◇
奥に行くほど帝国兵の数は激減していく。
ナナミとサキは先を急いだ。
もう戻れないところまできていた。
「何が騎士の誇りだよ。戦いが長引いて困るのは住民だよ。もう負けが決まっているんなら、降参しろよ。」
サキは呟く。
「無理無理、ここの人って頭かたーいんだから。」
そのナナミの言葉にサキは毒気を抜かれる。
「そうだね、特にゴルドーって頭固そう。」
「マイクロトフさんもそうだよね。」
「でも、カミューさんは頭柔らかいよね。」
そういいながらも、敵を片っ端から片付けて行く。
そして、細い通路を渡ろうとした時、ナナミとサキは懐かしい顔と再会した。
「ジョウイ!!」
ナナミは叫ぶ。しかし、サキはトンファーを構えたままである。
「サキ、ナナミ、久しぶりだね。」
ジョウイは静かに言った。
「君は、同盟軍の盟主を降りる気はないのかい?」
「ないよ。」
サキはじっとジョウイを見る。
「そこを通してくれる?」
「君がここまで来れたってことはもうここは落ちる可能性が高いか。僕にここの戦いを長引かせる権利はない。だけど、」
そこまで言った時、ジョウイはサキとナナミの後ろに兵達がいるのを見つけた。
「危ない!!」
ジョウイは声をあげた。
ゴルドーは弓兵にナナミとサキに向かって矢を射させる。
ナナミはサキをサキはナナミをかばおうとする。
サキは矢を打ち落としだが、ナナミはその矢に倒れた。
「ナナミ!!」
ジョウイとサキは叫ぶ。
ナナミに駆け寄ろうと2人はしたが、ゴルドーが二人の前に立ち塞がる。
「どけよ、おっさん。」
後ろから乱入してきたのはキリルとカイ。
ゴルドーは人質に取ろうとサキとジョウイの方へ突っ込む。
しかし、2人は攻撃をかわし、ゴルドーに紋章を使った。
真の紋章の前にゴルドーは敗れさった。
◇◆◇
「ナナミ!」
サキは駆け寄る。
が、ジョウイは駆け寄ろうとして、とどまる。
「サキ。ナナミを頼む。」
ジョウイは悲しそうに踵を返した。
「ハイランドの兵達よ。ここは撤退する。」
遠くからジョウイの声が聞こえた。
◇◆◇
「瞬きの手鏡は?」
カイはサキに問う。
言われてサキはやっと瞬きの手鏡を出す。
「キリル、旗を揚げて。」
そういうと、カイはサキとナナミを連れ、瞬きの手鏡を使い本拠地まで飛んだ。
◇◆◇
同盟軍本拠地は静まりかえっていた。
サキは瞬きの手鏡と対の大きな鏡の下にへたりこんでいた。
カイがナナミを連れて行き、ソレから、ソレから。
サキは混乱していた。
カイはサキの元に駆け寄った。
「医務室に行こう。」
遠くの方で、サキはその声を聞いていた。
現実味がない。
サキは首を降った。
カイはサキを立たせる。
「サキはナナミちゃんの家族なんだろ?今側にいなくてどうするんだ?」
呆然自失となっているサキにカイは叱咤する。
側にいてあげられなくて後悔して欲しくないのだ。
「ほら、行くよ。」
カイはサキを立たせ、引きずっていった。
◇◆◇
「戻らないのか?」
キリルはシキに尋ねる。
「この紋章は死者の魂を好む。特に、親しい者の魂を。だから、戻れない。」
いつもと違うシキの様子にキリルは黙る。
「君は行ってサキの傍にいてあげてよ。」
「ああ。」
何となく居づらくなってキリルは同盟軍本拠地に行く軍に走っていった。
「まあ、今はまだ彼女の容態が不安定だからね。」
キリルがいなくなった後、シキはポツリと呟いた。