再びの悪夢
バレリア、アイリーンからの手紙では、魚人らしいモンスターが出現しているらしいという情報が入った。
しかし、紋章砲については過去の話より詳しくはわからなかった。
シーナからの手紙では、魚人と遭遇し、戦ったことあると、書かれていた。
「おかしいのぉ。生き残りとしては、魚人の目撃が多すぎるんじゃが。」
シメオンはいぶかった。
「確かに。あの頃の生き残りと考えるには、多すぎる。」
カイはキリルに聞こえないようにシメオンに答えた。
キリルは日に日にあせりといらつきを感じていた。それを刺激しないためである。
「まさか、邪眼が?」
「邪眼とは限りはせんが、一度、あっちの世界への道は開いたじゃろうな。」
「邪眼のように自由にあちらの世界への扉を開け、こちらの人間を魚人にしてしまえる力を持てるかが問題だね。」
こそこそ話している中にシキも参加する。
「あぁ、そうだね。異界の扉が開かれて、魚人になっただけならいいが。」
「昔はたまたま邪眼がいたから、簡単に人を無力化できた。でも、邪眼がいないなら、わざわざ異界の扉を開けなくても人を無力化する方法はいくらでもあるだろ?」
「まぁ、邪眼が死んだと死っておるのは、ほんの一握りの人間じゃからのう。」
「確かに、異界に帰っただけと思う人がいたとしても不思議じゃない。」
シキは解放軍、同盟軍の両方のコネを駆使して情報を集めた。
カイやシメオンも最近、世話になったことがある宿などを当たる。
結果、紋章砲についての情報は何もなかったが、魚人はたくさんの目撃情報が集まった。
もう一つ、有益な情報として光る杖を持った魚人使いがいるという噂は集められた。
一行はその噂話を追うことにした。
「ヨーンがいれば魚人から聴けるのに。」
キリルはなかなか集まらない情報にげんなりしながら言う。
「へえ、そんなことができるんだ。」
シキの言葉にキリルは久しぶりに笑顔を見せた。
あの頃を思い出すのは嫌いではない。
「あ、信じてないだろ。」
「魂の存在があるのは知ってる。コイツは、名前通り魂を喰うから。それなら魂の声が聞こえても不思議じゃない。」
シキの言葉にキリルは一つの可能性を考えた。もし、自分が母の血を引いているならシキと協力すれば何かできるかもしれない、と。
「しかも、操る道具も持っている可能性があると。」
「げっ、捕まえとけばよかった。」
「いや、その可能性は少ないんじゃないかな?全国で見つかっているのは魚人の服は新しいものが多いそうだ。あの魔術師は、150年前の魚人を操っていた。」
「別口かよ。」
先の進まない調査にキリルは先が思いやられた。
「まったく何も関係ないってこともないけどね。」
シキはあいまいにごまかす。
「どっちだよ!」
キリルはシキの言葉にツッコんだ。
「まあ、こっちの世界にいる限り、たぶん僕とシキは大丈夫だと思う。ここは紋章が世界を支配している世界だから。」
「俺も大丈夫だ。俺はヨーンの血を引いているから。」
「えっ!」
カイたちは驚いた。
キリルは頬をかいた。
ヨーンと父の息子ということに誇りを持っていたが、初めて堂々と言って、なんだか気恥ずかしかった
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