思いの果て


1主→シキ、4主→カイ

今日の解放軍の訓練は休み。
人がいないところでコロナはひなたぼっこをしていた。

天気もよく、気持ちがいい。うつらうつらしていると、少し太陽の暖かい日差しがさえぎられ、コロナは薄目を開けた。
「こんなところで寝てるんだったら、手合わせしてよ。」
にっこり笑って手を出してきたのはシキ。

その手を握ると、シキに引っ張られ、体を起こされた。
「なんで僕が。」
「君の腕が一流でしかも部隊を任せられるってマッシュに言っちゃっていいのかな〜。」

シキは人の悪い笑みを浮かべる。
コロナはため息をついた。

「分かったよ。」
一介の兵士として、参加しているはずであるのに・・・、と思ったが、コロナは声を出さなかった。

すこし、シキのことが心配だったからである。

コロナは棍を持って立ち上がった。

「お願いします。」
先ほどの姿が嘘のようにシキは礼儀正しく振舞った。
そして、棍を構える。

コロナも息を整え、棍を構えた。

「行くよ。」
そう、コロナが言った瞬間、戦闘開始となった。

シキはコロナの右に攻め入る。
「右が甘い。」
その瞬間できた右胴の隙にコロナは棍を入れようとする。

間一髪でシキは避けたが、コロナの棍は折れ、シキの脇を掠めた。
シキはその棍を叩き落そうとするが、コロナはその前に引き抜く。

シキはそのまま攻め入ろうとするが、コロナは阻止する。
「左の足元。」
その瞬間、おろそかになったシキの左足にコロナは攻め入る。

数十分たって、シキは擦り傷だらけになった。

「もうそろそろやめたほうがいい。あまり使いすぎると筋が痛む。」
そういわれて、シキはようやくわれに返ったようだった。
「ありがとうございました。」
シキは礼をする。礼をし終わった瞬間、座り込んだ。

「悔しいな。コロナはしゃべる余裕があるのに。」
武術において呼吸は最も大切なことである。余裕がないと話すことはできない。

「ほとんど型はできているし、攻撃もなかなかいい。後は無意識のうちに隙をなくすことだけど、これは経験が必要だからね。」
そう言ってコロナは寝っ転がった。昼寝の続きをするためだ。

「経験かぁ。また付き合ってよ。」
にっこり笑ってシキは言う。その背にはいつものように黒いものを背負っている。

「それは父を倒すため?」
「そうだよ。」
あっさり返したシキにそれ以上コロナは何も言わなかった。
それがシキを安心させるた。
父を倒すため、と言っても否定せず、腕が立つ者といったら限られてくる。

コロナは父を倒すということを否定できなかった。
もし、自分がゲオルグの立場だったらと考えたこともあるし、叔母を手にかけた。だから、否定することはできない。
だから、見ることとほんの少し手伝うことしかできない。
これは、シキが乗り越えていくことなのだろう。

シキは座っていた状態から立ち上がった。
「今日はいい天気なのに、せっかくだから昼寝したら?」
「まだすることがあるから。」
コロナはそれ以上は引き止めず、シキを見送った。









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