賭け
ジョウイが落ちたのはリタポンの上。もちろん碑はばらばらになった。
「あーーーーーー。」
思わずサキは叫んだ。
「せっかく勝てそうだったのに。」
哀れなジョウイは腰をさすっていた。
「で、ジョウイ、シキさんは?」
サキから大丈夫とも聞かれず、ジョウイはがっくりとうなだれた。
「シキさんはあっちに残るって。」
「ふうん。ね、カイ、これ、ジョウイって言うんだけど、連れて行っていい?」
その言葉を聴きジョウイは驚いた。
「え。」
「もちろんいいですよ、じゃなくていいよ。君たちが無人島にいたのって転移させられたから?」
「うん、あれ、言ってなかったけ?」
「聞いてないよ。」
カイとサキがなごやかに会話している間。ジョウイは呆然としていた。
「えっと、サキ?」
「なかなかジョウイが来なかったから意地悪してみただけ。お帰り、ジョウイ。」
戸惑うジョウイに先はにっこり天使の笑みを浮かべた。
「ただい・・・・・」
「もー、何か分からないけど、もう一回リタポンしよー。」
ただいま、と言おうとしたジョウイの言葉はリタにかき消された。
サキは板に向き直る。
「ジョウイ、貸し一個だからね。」
にっこり笑ったサキの頭に小さな角が生えているようにジョウイは見えた。
もちろんサキはシキが強引に真の紋章の場所を感じて送ったことに気がついていた。
それでも、ジョウイのせいにしたくなるのはジョウイがいじめられっこ体質だからだろう。
「サキ様、賭けは先ほどで終わりにするはずでは?」
そこへ口を挟んだのはシュウ。
「チャラになっちゃったんだからもう一回、だけね。」
と言ってサキは碑を並べ始めた。
「先ほど、ジョウイ殿が落ちてきた時点でもう、ツキがないということを理解してもいいはずだが。」
そうシュウが嘆息する前でサキの碑によってカイが上がっていた。
◇◆◇
「ねー、リタポン、っていうのしてみたいんだけど。ちんちろちんはしたことあるんだけどね。」
シキはトロイにまとわりついていた。手にはクールーク兵たちからちんちろちんで巻き上げたお金を持っている。
「今は忙しい。」
トロイはそっけなく言う。それでもシキは負けず、トロイの首にぶら下がる。そして囁いた。
「オベルを攻める準備をしているから?」
「な、」
「図星?」
シキはにっこり笑った。
「うん、じゃぁ戦争が始まるまでにこのあたりを船に乗って散策してみようかな?そしたら自由にこのあたりをテレポートもできるようになるし。」
シキは、狸オヤジを言いくるめて小型だけど早い船もらったんだよね、と小さく笑っていった。
そこでやっとトロイはとあることに気がついた。
「もう一人の片割れは?」
「うーん、見聞を広げに出かけたってことで。」
トロイは釈然としなかったが、これ以上尋ねてもシキは答えないと思ったため、問い詰めることはしなかった。
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