友人の定義
部屋の中にカイは誘い、ジョウイは薦められるままに部屋に入る。
リーダーの部屋、というものの船、ということもあり、その大きさは他の部屋より少し大きいぐらいでしかない。
もしかしたら、リノの部屋の方が大きいかもしれない。
それがカイの立場の微妙さを現していた。
「あなたは友人と敵対しているそうですね。」
ジョウイは再びカイにそういった。
「そういえば、君たちも戦ったって、言っていたね。」
カイは思い出したというように言う。
「まぁ、敵対しているって言っても、直接手を下すわけでもないしね。」
なんでもない、と言うようにいうカイにジョウイは久しぶりにカチン、ときた。
「なんでもないというように言わないで下さい。」
「なんともないってわけじゃぁ、ないんだけどね、そんなにどろどろした感情とか悲嘆にくれる感情とかもないよ。なんと言っても小間使いだったしね。」
のらりくらりとカイはかわす。
「でも、なんともないわけじゃない。」
ジョウイの直球なセリフにカイは苦笑する。
「まぁね、でも大丈夫だよ。」
「まったく、サキが言うとおりだ。あなたは心配されているってことを自覚すべきだ。」
そう言って、間をおく。
「僕は母さんが生まれた故郷を取った。でも、サキとナナミのことがつらくないわけじゃぁなかった。シードもいた。クルガンもいた。でもそれでも寂しかった。」
カイは黙って聞いている。
「あなたはその左手に宿ったもののせいで、その前は小間使いだからって言い訳にして、逃げている気がする。僕は、後シキさん知っているんだっけ、あの人も、大切な人を亡くした。さっきあげたよね、クルガンと、シード。僕の傍にいてくれた人。それはつらいことだったけど、でも、一緒にいたときのことは忘れない。一人と思っていた僕のそばにいてくれたから。こんなこと言って差し出がましいのかもしれないけど、カイさん、もっと近づきましょう。」
とそこまで言ってジョウイは照れた。
「すみません、語ってしまって。えっと、ごめんなさい。」
そう言ってジョウイは走って、部屋の外へといった。
カイは出て行ったあとを見てじっと考え込んだ。
◇◆◇
その頃エレノアはシュウの訪問を受けていた。
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