歴史に残されない再会
ユイたちはビクトールの機転により、グレックミンスターの外に出れた。
しかし、ユイはどこかそわそわしていた。
「どうかしましたか?坊ちゃん?」
グレミオが聞いても首を振るばかりだった。
歩いて一時間もたたない頃だった。広い草原の中にあるちょっとした木が生えているところでユイは変な動きをしたのだった。
ビクトール、クレオ、グレミオからユイは遅れだしていた。
気配を消してじりじりと後ずさる。
気配を消していたため、あまりに自然だったため、3人はしばらくそのことに気が付かなかった。
ユイが大人たちから少し離れたとき、一人のだぼだぼの布をまとった少女が木の陰からユイの元にやってきた。
少女の名はノア。ユイの双子の妹だった。
「ユイ、これ。」
そう言って少女は荷を渡す。そこには旅に便利なものやら何やらがたくさん入っていた。
「ありがとう。」
そう言ってユイは微笑む。
「ねぇ、ユイにぃ?ノアのせいじゃないよね。ノアが悪いから。」
「ノアのせいじゃない。あの占いが悪いんだ。」
ユイはノアの頭を優しくなでた。
「占いでノアが預けられたこと、ノア、気にしてないから。だってユイにぃがいるんだもん。ユイにぃ、大丈夫?」
ノアは大きな目でユイを見てくる。
「ノアは心配しなくていいよ。いろいろなことが重なったんだ。それだけだから。」
ユイはやっぱり微笑んでいった。優しげな空気がユイから出ていた。
「あの子のこと頼むね。」
あのことはユイとノアがかわいがっているテオからもらった、馬のことだった。
ガウルンホースといって、気性が荒く、並の大人でも乗りこなせるものは少ない。
ましてやあ子供で乗りこなせるのはユイとノアぐらいだった。
「うん。」
そう言って、少女は消えて言った。
「坊ちゃん、疲れたんなら休みましょうか?」
ノアが消えた後、グレミオはユイが遅れていることに気付いて言った。
「僕はまだ若いから大丈夫だよー。」
ユイはグレミオたちに走って追いついた。
ビクトールはユイの横に人影があった気がして首をかしげていた。
◇◆◇
運命ってあるのかもしれない。
オデッサとユイが出会ったのは、運命ってものだったのかもしれない。
運命という言葉は逃げているようで嫌いだが、ビクトールは過去を振り返るとき、いつもそう思う。
運命の出会いというには、そこはうらびれた地下道であった。
決して、光が差さない場所。この町の汚れが集まり、流れ出ている。
「お久しぶりです、オデッサさん。」
ユイは大人びた表情で言った。いつものガキみたいな言動はどこ行ったのかよ、とビクトールは思う。
「久しぶりね、ユイ君。」
オデッサも対等な相手としてユイを扱う。
「ゆっくりしてくれたらいいわ。」
そう言ってオデッサはユイに微笑みかけた。
「ありがとうございます。」
ユイは頭を下げた。
本当に大人っぽくて、旅の最中とは比べ物にならないぐらいである。
「あんなに大人びていたっけな。」
ビクトールのそのつぶやきにオデッサは微笑んだ。
「貴族の子供って言うのもいろいろ大変なのよ。」
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