暗い監獄の中


暗い監獄の中、不安になる。
いつも真っ暗な時にはグレミオか、テッドか父がいた。
いつも僕を照らしてくれた。
なのに、今、なんで誰も横にいてくれないの?

◇◆◇

ぱん、とノアはフリックの両頬を同時に叩く。
フリックはスカーレティシア城をフリックの独断で攻めた。その結果、惨敗である。
ちなみに場所は牢屋の最奥である。
ミルイヒの罠にはまったと分かった瞬間、ノアはルックに命令し、フリックを本拠地の牢屋へと飛ばさせたのだ。

そして風の魔法を魔法兵団に使わせ、なんとか命からがら逃げてきたのだった。
ただ、命からがらに逃げてきた兵たちはまだ花粉を大量につけていた。
こんな中で平気で動けるのはノアと熊(ビクトール)ぐらいなものだ。
軍師も最前線に出ていないだけ、元気である。ルックも、風の申し子と言う名にふさわしく、花粉を吸い込んでいない。
ちなみにフリックは先に牢屋に入れられ、隔離されていたので、ほとんど被害はない。
後、足をくじいて、リコンの宿屋で休息を取っていたグレミオも無事だった。再び、グレミオが本拠地に来たころには花粉は拭い去られていたからだ。
ま、そんなこんなで、動ける部隊が少ない。
先鋭を投影して、リュウカンを助ける、と言う案が出た。誰が行くかについては、マッシュを押し切り、軍主のノアが行くことになった。
フリックは半強制的にノアが引きずって来られ、ビクトールは面白そうだ、というようについてきた。
ルックは強制だ。
グレミオは危険だからついてくるな、と言ってもついてきた。

◇◆◇

そして、悲劇は起きた。
グレミオはただ一人、ユイ・マクドールを守るため、人食い胞子のいる、暗い監獄の一室に残ったのだ。
「開けろ!」
ユイは感情のまま怒る。
「ぼっちゃん、グレミオは初めて坊ちゃんの言うことに逆らいます。」
グレミオは顔が見えないことをいいことに一筋、また一筋と涙を流す。
「お願いです。ぼっちゃんは、最後まで信じることをつらぬいてください。それがグレミオの・・・・最初で・・・最後の・・・お願いで・・・す。」
不意にユイは右手に痛みを感じる。何も言われなくてもグレミオは死んだということが分かった。
ユイは静に手を下ろした。
沈黙が辺りを占めた。

マッシュはソニエールの監獄の近くで待機していた。
本拠地は襲われにくいところにある。しかもミルイヒの軍は湖軍が少ない。
彼が本拠地を狙ってくることはまず、ないだろうと言う判断からだった。
そして、まぁ、攻められたら負傷兵が多く、軍主のいない今、ぼろ負けする。ならば、ソニエールの監獄の傍で待っていたほうがいい、と言う判断からだった。
マッシュは胸騒ぎがした。ソニエールに入ってから出るまで長すぎる。
しかも、ミルイヒ・オッペンハイマーが入って行ったという情報もある。
マッシュはその報告を受けてから半日待った。
そして、半日も帰ってこないと分かると、マッシュは無事そうな一般兵たちを数人引き連れソニエールへと向かった。

軍主も軍主なら、軍師も軍師だ。行動力がある。そう思ったのは誰だったか。

◇◆◇

この赫い血は初めてじゃない。
ボクが罪を犯すのは、もう何度目だろうか。


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