祈りにも似た想い


その頃思っていたことは妹が元気でいればいい、ただそれだけのこと。
まだ、この世の厳しさも寒さも知らなかった頃の話。

ボクは外に出て、町の人々と出会う。
厳しい現実と向き合っている人々と。

いつまでたってもボクは無知で。
だからこそ、必死に知りたがっていた。
でもそれはユーエツ者のゴーマンでしかなくて。

そんな時、ボクは妹に出会った。

そして、ボクはその時から選択を迫られることになる。

◇◆◇

マッシュは目を閉じていた。
ユイはソニエールの監獄から出てきたとたん、耐えられない、と言うように、一粒、また一粒、と、涙をぽろぽろと流した。
「戦争はやはり私にはつらすぎる。」
そうマッシュがつぶやいた時、こんこん、と部屋の扉が叩かれた。

「マッシュ、いい?」
それはユイの片方の人格のノアだった。ユイの妹の方のノアも連れている。
「マッシュに、聞いてほしいことがあって。ねぇ、ミルイヒ・オッペンハイマーは操られてる?」
マッシュはノアが何をしたいのか悟り答える。
「ええ、確実でしょう。ウィンディから紋章を受け取っていた、と聞きましたので。」
ノアはにっこり微笑み妹に言った。
「ね、ノア、聞いた?いいかい、ミルイヒを殺してはいけないよ。ミルイヒは僕が決着をつける。君には別にしてもらうことがあるから。」
妹の方のノアはこくりと頷く。
「いい子だね。じゃぁ、マッシュと話があるから、少し外とに出ててくれる?」
ノアはわかったと言って外に出た。

ユイの一つの人格であるノアとマッシュは今後のことを話し合った。

話し合う前、マッシュは唯一つ、つらくないのですか?とノアに尋ねた。ノアの答えはいいえ、だった。
「ユイと妹のノアはね、笑うことを忘れていたんだ。でもね、ボクがというか、ユイがノアに出会って、二人とも笑えるようになったんだよ。でもね、僕は泣けないんだ。」
顔の表情を動かすことなく、ノアは淡々と応えたのだった。

◇◆◇

そして戦争が始まった。
妹のノアがなぜかマッシュの横にいた。
ノアはおとなしくしていた。
「クワンダ・ロスマンとミルイヒ・オッペンハイマーを殺そうとしたらしいですね。」
マッシュはノアに尋ねた。
「今もミルイヒを殺したい。でも、ユイが操られているからだめ、って言ったから。」
ふと、その言葉に疑問を覚え尋ねる。
「なら、操られてなければ?」
「殺すよ。」
それは即答。マッシュの脳裏にある可能性が浮かんだ。
「それがあなたの父、テオ・マクドールでもですか?」
「私に父はいないよ。いたのは母といるのはユイ兄だけ。うん、テオは殺したいけど、でも、ユイのお父さんだから、ユイに言われない限り、殺さない。」
それは危険なことだった。マッシュはユイと話し合わなければならない、と思った。

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