赫き血の中
うわさが戦場に広がっていた。
戦場に真っ赤な女神が舞い降りるんだって。
でも、その女神は敵を殺すけど、気に入らない味方だって殺す。
また、別のうわさ。
帝国の奴らがどんどん暗殺されているんだって。
暗殺者は軍主の狂信者らしいぜ。
それは、真実。
彼女はもう、何人も人を殺している。
僕のために。
◇◆◇
夜遅く、ユイはミルイヒの部屋に向かっていた。
何か、ひどく嫌な予感がする。
この予感が当たらないようにと祈りながら歩く。
扉を開けて目に飛び込んできたのは赤い血。
ユイは反射的に水の紋章を使っていた。
「なんで?」
それはユイの妹のノアからの問い。
「なんで、殺さなかったの?」
ユイはミルイヒが一命をとりとめたことに安心した。
ミルイヒはぼんやりと目を開ける。
「ユイ様が二人、いえ、こちらがノア様なんですね。」
そう言ってミルイヒはノアを指差す。
「ミルイヒ殿、しばらく眠るといい。妹が迷惑をかけてすまなかった。」
ユイが、いやユイの一つの人格、ノアが言った。
◇◆◇
そこに広がるのは沈黙。
「なぜ、こんなことをした?」
ユイの一つの方の人格のノアは長い長い沈黙の後、妹の方のノアに聞いた。
「だって、だって許せなかったんだもん。ユイを傷つけたくせに。」
「私はこのようなことが起きたことがつらいよ。」
ノアは間髪いれずに言う。
長い沈黙が二人の間に広がった。
「ノア、出ようか。」
ユイの一つの人格であるノアは妹に尋ねた。
妹の方のノアは頷く。
二人は黙々と歩き出した。
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