春眠
ユイは同盟軍本拠地でぐっすり寝ていた。
久しぶりの穏やかな日々。
春眠、暁を覚えず。
そんな言葉がちょうど当てはまるような暖かさだった。
鳥は自由に舞い、花はこの季節のために咲き誇る。
夏みたいに過酷ではなく、秋のようにこれからを心配しなくてもいい。
そして、冬のように冷たく凍えない。
春、という季節はそんな季節だった。
もちろん、夏には夏、秋には秋、冬には冬のよさがあることは知っていた。
とはいえ、今は春。
この暖かさが一番気持ちがいい、と感じるのが普通だから、と思い、目をつぶった。
◇◆◇
ルックは本を読むため、同盟軍の本拠地の隅の方にある野原に向かっていた。
そこには人がおらず、こういった外にいてても気持ちがいい季節によく行く穴場だった。
ルックでさえもこの気持ちのいい季節に中で閉じこもろうという気は起きなかったのだ。
テレポートで転移したのはいいが、そこには先客がいた。
最初は毛布が落ちているのかと思った。
しかし、中から髪の毛のようなものが出ているのを見つけて、ルックは驚いた。
「あ、おはよう。」
ユイは寝ぼけ眼をこすり、言う。
「なんで君がいるんだ?」
その言葉にやっとユイは頭が回ってきた。
「面白そうだったから。」
そう言ってにっこり笑う。
「このごろノアとつるんでサキがいたずらしまくっている、って聞いたけど君、だったとはね。」
「僕じゃなくてノアってやつが別にいるのかもよ?」
「君だよ。」
あきれたようにルックは言う。
「隠していたね。そうじゃなきゃ、こいつが反応してたはずだ。」
ルックはユイをにらむ。ユイはニコニコと笑っているだけだった。
「にしても、君が惰眠をむさぼっているなんてね。」
埒が明かない、と思ったのか、話を変える。
「あの時は、立ち止まれなかったから。前に動かないと怖かったから。今はのんびりしてもいいかなって。」
「それで、いたずらを仕掛けたわけ?」
ユイはチェシャ猫みたいに目を三日月にする。
「君も一緒にしたじゃん。ねぇ、またしにいかない?」
ルックはやれやれ、吐息を吐く。
しかし、する気が満々なのはユイの目には明らかだった。
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