眠り
なかなか真の紋章が集まらない。
いらいらしながら、宿に戻るとユイがいた。
ルックは面を被ったままだったが、ルックと分かったようだ。
大きく手を振る。
「わざわざグラスランドに何しにきた」
とルックはそっけなく言った。
「ルック、一緒に寝よ。」
そう言って、ユイは枕を差し出し、ニコニコ笑って言った。
何を!と一瞬怒鳴りそうになった。
が、昔のことを思い出し、ユイの方を見た。
いつもとなんら変わらない。
しかし、ユイにとって大切な誰かが死んだときもユイは変わらなかった。
◇◆◇
「ねぇ、一緒に寝よ。」
そうユイに何回も誘われた。
門の継承戦争の時も、デュナン統一戦争の時も。
「本を読んでいるから。」
と、否定すると、じゃぁ、そこにいて読んでてね、そう言って、あいつはごろんとねっころがった。
なぜ、と尋ねたら、
「起きたとき、誰もいなかったら自分が一人みたいで寂しいから。」
そう言ってあいつは笑った。
◇◆◇
「何かあったのか?」
「グレミオが死んだんだ。また、僕を庇って。」
淡々とユイは言う。なんの表情も見ることができない。
「分かっていたことだ。いつかグレミオが死ぬことは。毒は置いていかれる運命にいる。」
「僕は忙しい。けど、しばらくはこの宿にいる。」
ルックはユイの顔を見ず、ぶっきらぼうに言った。その言葉にユイは顔を明るくした。
「ただ、もうすぐ、旅に出る。誰か、君のヒマに付き合ってくれる人を探すんだね。」
その言葉にユイは嫌な予感がした。
◇◆◇
そして、時が経った。
ユイはただ一人、約束の石版の前で眠っていた。
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