偶然


楽勝、と思っていたけれども、芋虫は蝶になった。
芋虫からしても嫌悪感がぬぐえなかったが蝶は見るからに毒々しい。
しかも、毒攻撃をしてくる。
サキはさっさと倒すことに決めた。

その時、隣で闇が広がった。その次の瞬間、ワームは簡単に倒された。
ユイの右手にある生と死をつかさどる紋章によって跡形もなく消え失せた。
少し眉間にしわを寄せているユイもサキのように嫌悪感を感じていたのだろう。
右手を嫌そうに振った。

サキは輝く盾の紋章を使い、毒状態になっている皆を癒すことにした。しかし、コウだけは状態が良くならない。

「なんで・・・?」
サキは呆然とつぶやく。サキにとって、なぜコウが癒されないのか分からなかった。

「どうやら肺の奥にまで毒が入っているようだね。癒されている横から毒に侵されている。」
ユイはそう判断し、コウを背負った。

「行こう。」
「ど、どこへ?」
いきなりコウを背負ったまま走り出したユイにサキは戸惑いながらも併走する。
「トランへ。」

「えっ!!」
グレミオの驚きの声が響き渡った。

◇◆◇

ユイはコウを背負って走っていたが、その速さはとてつもなく早かった。グレミオは置いていかれたほどだった。
サキはコウがこれ以上苦しまないよう癒しながら走る。それでも、コウの息は荒くなる一方だった。
関所が見えてきた。いつもはバルカスに護衛され、ゆっくりと進むのだが、今日はそうも言ってられない。
なんとかして、先に行く方法を考えなければいけなかった。

「馬を貸せ。」
関所に着くなりユイはそういった。サキはまずい、と思った。
いきなりそんなことを言われてはバルカスも反発するだろう。護衛なしで馬で駆け抜ける、と説得するのに時間がかかってしまう。

しかし、次のバルカスの行動はサキにとって意外だった。
「ユ、ユイ殿、帰ってきてくださったのですか。」
バルカスは感激して声も出ないという感じだった。絶対君主制という言葉がサキの頭によぎる。
「バルカス、三度は言わない。馬を用意しろ。」
「分かりました。」
バルカスは馬小屋のほうへと走り去った。

◇◆◇

バルカスは急いで馬を四頭用意させた。最初の一頭が来たときユイはその馬にコウを背負ったまま飛び乗り、駆けていった。
慌ててサキは二頭目の馬を捕まえそれを追いかける。
普通なら一日かかる関所からの山越えを二人は半日で行ってしまった。
たまたま、国境警備隊にガルンホースというユイの父テオが使っていた馬の生き残りがいたのが幸運だった。

夜遅く、サキたちはグレックミンスターについた。コウはすぐにリュウカンに預けられた。
大統領レパントは何かいいたそうであったが、妻のアイリーンに諭されて明日、話し合いが行われることとなった。

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