偶然


それは夜が更けていたことだった。
グレックミンスターの城から抜け出して、ナナミとサキは出かけていた。

そこには思わぬ人がいた。
ユイ、だった。最初に会ったときと同じようにフードをかぶっている。
今にも旅に出そうな格好をしている。

「何しているんだ?」
わかりきっていることをサキは聞く。
「ちょっとレパントがうざくてね、抜け出そうとしたんだよ。」
ユイはにっこり笑った。

「もちろん、いろいろなことを済ませてからね。」
サキはこのときユイを敵に回したくない、と思った。

余談だが、このときグレックミンスターの城の英雄の間が何者かに荒らされ、まともな歴史書や地図以外はなくなっており、騒ぎになっていた。

「ねぇねぇ、じゃぁさ、私たちのお城に来ない?」
気軽なノリでナナミは誘った。

「いいの?」
ユイは驚いた顔で聞く。
サキはなぜか珍しいものを見た気になった。

「いいよ。いちようボクが軍主なわけだし、シュウが何を言っても決めるはぼくだし。」
どっか問題のありそうな軍主はそういった。
「それにフリックさんや、騎士さんたちみたいな、からからかいがいのある人たちがいっぱいいるし。」
そのとたんユイの目が剣呑に光った。

「ふぃ〜ん、フリックいるんだ。ってことはビクトールもいる?」

サキは背筋になぜか氷を入れられた気がしたがサキはあえて無視した。
「いますよ。」

「じゃぁ、お言葉に甘えちゃおっかな?」
「わーい、ユイが来る。」
ナナミは単純に喜んだ。
「じゃぁ、バナーの村で待ち合わせで。瞬きの手鏡、国境越えて使えないんです。」

「うんじゃぁね。」
そう言ってユイは群衆の中に消えようとしたが振り返る。
「あ、僕のことは秘密にしてね。元解放軍のメンバーにも。気づかないと思うし、楽しそうだから。」
サキも面白そうなことは好きなのでそれを快諾した。

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