こえ
1主→ティル 5主→コロナ
夜、ティルは目を覚ました。
音が聞こえた気がした。
横に寝ていたゲオルグもいない。
ゲオルグは巡回に出ていたのだが、ティルは知らない。
ティルはベットから抜け出した。
また、音がした。
音じゃなくて、声かもしれない。
小さくゲオルグの部屋の扉を開ける。
いつもはたくさんの人がいるのに、誰もいない。
少し怯えながらも、ティルはもう少し扉を開け、耳を済ませる。
声は、斜め向こうのコロナの部屋でしているようだった。
そろり、そろり、とティルは足を踏み出す。
そして、ティルはコロナの部屋の前まで行ったのだった。
扉に耳を当てる。
二つの優しい声がした。
聞いたことがある声。
ティルは誰の声だったか思い出そうとした。
「どうしたのだ?」
突然の小さな声に、ティルは驚いた。
「!!!!」
大きな声を出さないよう自分の手で口を押さえる。
「そんなに驚かれるとは思わなかったな。」
「ゲオルグ。」
現れたゲオルグを見て、ティルはほっとしながら、ゲオルグの小さく名前を呼ぶ。
「で、どうしたのだ?」
「声がするの。」
そう言ってティルが指し示すのはコロナの寝室でゲオルグは眉をひそめる。
暗殺者の危険性もある。
ゲオルグも聞き耳を立ててみるが、声は聞こえなかった。
ただ、ティルの目は嘘をついているようには見えない。
逡巡した後、ゲオルグは、少し、扉を開いてみることにした。
扉の向こうに二人の人影が見えた。
慌てて大きく扉を開けると、そこにはアルシュタートとフェリドの姿があった。
ゲオルグは呆然となる。
「アルおばちゃんと、フェリドおじちゃんだ。」
ティルはニコニコと手を振った。
優しい顔で、二人がティルの頭をなでようとした時、コロナは薄目を開けた。
そのとたん、二人は消え去ったのだった。
「あれ?ゲオルグ、ティル、どうしたの?」
「いまね、アルおばちゃんと、フェリドおじちゃんがいたんだよ。」
「そうなんだ。だからあったかかったのかな?」
そう言って、コロナは笑う。
久しぶりに父上や母上に抱かれたようにあったかかった。
泣きそうになるぐらいに。
「うん、きっとそうだよ。」
「ああ、優しい目でお前を見ていた。」
ティルやゲオルグも同意する。
「うれしいな。」
そう言って、コロナは再び眠りについた。
ゲオルグとティルは顔を見合わせた後、そっと、部屋を出たのだった。
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