運命の導くままに



坊→ティル 2主→リオウ 4主→カイ 

目の前に並んでいる饅頭たち。
ナナミとリオウは顔を見合わせた。
腹はさっきから鳴りっぱなしだ。

カイは三人の手にぽんとお饅頭を乗せた。

「ほら、食べようか。いただきます。」
そう言うと、カイは饅頭を食べだした。

ナナミとリオウは顔を見合わせていたが、しばらくして「いただきます。」といって食べだした。
ティルだけは食べていない。

「食べないのか?」
もう5個の饅頭を食べてしまったカイは言う。
「いえ、悪いですし。」
「いいから、いいから。あ、後、10皿お願いします。」
はむ、っとカイはとても幸せそうに食べる。その姿はあの戦闘の姿からは想像もできない。

「……いただきます。」
ティルは、それ以上何も言わず、手を合わせた。

「よく、逃げられたよね。」
ナナミはティルを見る。
「テグス、張ってあって、引っかかってくれたから。」
「えーーー、知らなかった。」
「それに、足も速いよね。」
ナナミとリオウはティルに興味を持った。
同い年で、あれだけ早く走れる子はいないからだ。
ナナミが一番で二番がリオウ。三番目がジョウイ。だから逆にうらまれたこともあった。
「くやしいな、あたしが村で一番足速かったのに。」
ナナミは悔しそうに言う。
「いたずらしてると自然にね。グレミオに怒られちゃうんだよ。」
ティルは困った顔をした。
カイはそれをほほえましそうに見ていた。

「これからどうするつもり?」
お饅頭の山が半分になった頃、カイはティルに尋ねた。
「お願いがあるんですけど……二人を、家まで連れて行ってくれませんか?」
「いいよ。でも、君は?」
「僕は、大丈夫です。」
「一人で、敵の本拠地に乗り込んだりしない?」
「しません。しなきゃいけないことは分かっていますから。」

と、その時、一人の客が店の中に入ってきた。
「おい、カイと、えっと、ナナミとリオウだっけ。」
「テッド!久しぶりだな。」
「「あ、じっちゃんのとこに来ていた、お客さん!!」」

「とりあえず、どうなってるのんだ?」
そう、二人だけなら、まぁ、かまわない。しかし、そこには150年たっても変わらないままおいしそうに饅頭を食べているカイがいた。
なにか、事情があるのだろう、とそう考えたのだ。

「なるほどな。それで、これからどうするんだ?」
今までの事情を聞いたテッドはカイにたずねた。

「えっと、まぁ、とりあえずこの子たちを送って……」
「で、乗り込むつもりなんだろ?」
「まあね。」
まったく、とテッドはため息をついた。
「いつも、無茶が過ぎる。しょうがねぇから、ついていってやるよ。」
カイは破顔した。いつも、ぶつぶついいながら、テッドは協力してくれるのだ。
「仕方なくだからな。」
テッドはカイの笑顔に膨れる。

くすくすくす。
それを見ていたティルは思わず、といったように笑う。
テッドは赤くなるばかりだ。

ティルは二人に人懐っこい笑みを浮かべた。
「でさ、どうせなら、僕を囮にしない?」
大人をたばかるときの笑みだった。

◇◆◇

「帰らなきゃ、いけないんじゃないのか?」
「無理だよ。どう考えても。今、戦っているのは赤月帝国と都市同盟。川の関所も山の関所も厳重だろうし、砂漠越えはさすがにできない。ハイランドと都市同盟を行き来するようにたやすくはない。なら、目立って僕が無事なことを知らせる方がいいじゃん。」

「お前が来ると、こいつらはどうするんだ?」
「あのね、追われてるもの3人が一緒にいる方が目立つと思わない?」
あきれたようにそういった時、ナナミとリオウは反応した。
「僕も行く。」
「あたしも!!」
「ほら、あいつらついてきそうだし。」
「きちゃ駄目、だよ。」
ティルは二人に何かを耳打ちする。
「「分かった!!待ってるね。」」
何を言ったか知らないが、二人をたやすく、納得させてしまった。

カイとテッド、二人がかりで説得しても、ティルは引かなかった。

「しょうがねぇな、何かあったら逃げろよ。」
結局、二人は折れた。
下手に動かれても困るからだ。

「がんばろーね。」
テッドとカイはため息をついた。


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