愛しき日常

1主→ティル、4主→カイ

カイ、ティル、テッド、キリルの4人は、乗り合い馬車に乗った。

テッドは真っ先に入る。
そして、一番後ろの端にどっしりと座る。
「テッド、その動作、おじいさんみたいだよ。」
そういいながら次にティルが入ってきた。テッドは汗を垂らした。
一番危険なのはティルだからである。ティルはテッドの隣に座った。
「また、真っ先に乗って学習能力がないよね。」
ティルはケラケラ笑う。先に入るということはテッドの横に座ってくださいといわんばかりだからだ。
「この前、後から入ったららティルの前しか空いてなかったからな。」
あの時はいつもに増して髪をぐちゃぐちゃにかきまわされたのだ。
だから今回は後ろに気を使い、一番後ろの席をとったのだ。

「君の髪の毛はかきまわしてもいい気がするんだよね。」
そう言いながらティルはテッドの髪をいぢった。
「カイ、キリル、こいつをどうにかしてくれ。」
テッドは2人に助けを求める。
「魔王様に逆らえると思う?」
そう楽しそうに言ったのはカイだ。
「まあ、あきらめな。」
ぽんぽんと肩を叩いたのはキリルだ。キリルもテッドほどじゃないがティルにいぢめられている。

テッドは逃げ場がないことを悟った。

乗り合い馬車は走り出した。目的の場所に着くまでまだまだ時間がかかる。
4人はいつもの通り、話しだした。
「さっき、通りがかった鍛冶屋の店主にに顔見会わせたから、にっこり笑ったら、真面目にやれって言われた。」
「テッドの笑い方って、へら、って感じだから。」
「親友の言葉にしては、酷くねぇか?」
「なーんてね、冗談、冗談。大丈夫、テッドの笑顔はかわいいよ。」
テッドは助けを求めて再び2人を見る。

「テッドはティルのおもちゃだしね。」
キリルはカイの横の安全圏で言う。
「そのいい方だとテッドのこと人扱いしてないよね。」
カイは鋭く突っ込む。
「最近、カイ強いなあ。」
キリルはつぶやく。その横でテッドも首を激しく縦に振って同意を示す。
「今まで150年猫かぶってたんだけど、コレが地たよ。周りに影響されてね。」
「ティルの側にいたらダメだ!」
テッドは声をあげる。
「テッド?」
ティルはニッコリ笑う。
テッドはあとずさる。が、後ろは壁だ。
「何か言った?」
「ナンデモアリマセン。」
テッドは半分、氷つきながら答える。
「でもまあ、実際、いぢめられっ子がいるから、ついいぢめたくなるんだよね。」
「それは俺が悪いってことか?」
「あれ、そう聞こえた?」
ティルはアハと笑う。
「そのアハって笑い方が黒いんだよ!」
「えー、かわいいじゃん。」
「お前が言うと黒いんだよ。」
「テッド?」
ティルは再びニッコリ微笑みテッドを見る。そして、またテッドは謝るハメになる。

そういうやり取りをしながらも、ティルはテッドの頬をぷにぷにと引っ張る。
「面白そう。」
それを見ていたカイもテッドの頬をつまもうと参戦する。
「狙われてる。どうしたら……。あ、自分で持っておけば……。」
そう言ってテッドは自分で頬をつかんだ。
ティル、カイ、キリルの3人は爆笑した。
「お、おもろすぎ。」
キリルすら笑ったことにより、テッドは焦る。
「い、今のなし!」
しかし、今言ったことは消せない。
その後、テッドはもて遊ばれた。
そして、乗り合い馬車が目的地に着く頃にはテッドは灰になっていた。



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