喧嘩


坊→ティル、2主→リオウ、4主→カイ、5主→コロナ


魔術師の塔から星見の結果を取りに行くという仕事も終わって、今はマクドール家でマクドール家の面々はくつろいでいた。
グレミオは晩御飯を料理し、パーンは昼寝をしに部屋へ戻った。

テッド、クレオ、ティルの三人はなんとなく食堂にいた。
「はー、終わった、終わった。」
「テッド親父くさい。」
「ほっとけ。」
そんな漫才のような会話にクレオは微笑みながら加わった。
「そういえば、坊っちゃん、今日は少し不機嫌そうですね。」
最初の頃こそティルは上機嫌だったのだが、任務が終わる頃には不機嫌がにじみ出ていた。
フッチやグレミオやパーンには巧妙に隠してはいたが。

ティルは罰の悪そうな顔をした。ちらり、とテッドを見る。
「うん。だって…。」
しばらく悩んだ後、ティルはクレオに囁いた。

テッドはキョトンとする。
この部屋には、ティルとクレオとテッドしかいない。
つまりはテッドには秘密、ということなんだろう。

テッドはからかう材料を見つけて、しめしめと思った。
「何話してんだ?」
「なんでもない。」
「俺にも教えろ。」
「僕にだってプライバシーはあるんだよ。」
最初はからかう感じで言っていたはずなのに、頑ななティルに、だんだんと剣呑とした雰囲気になってきた。

「なんだよ、それ。」
「ヤダ。言わない。」
「このエセお坊ちゃんが。」
「エセ、ってなんだよ。そっちこそ、爺くさいくせに。」
言い合っているうちに、次第に言葉の応酬がエスカレートしていった。
お互いに臨界点に達し、取っ組み合いになる寸前である。

しかし、テッドには秘策があった。
「あのこと、グレミオさんに言うぞ。アレは、お前の過失だからな。」
その言葉でティルは固まった。
「テッドの卑怯者!」
「へ〜んだ。なんとでも言え。」
どういう選択をするにしよ、ティルの負けは確定したのだった。

クレオは優しい顔をして、その様子を見ていた。

「で、白状するのか、しないのか?」
テッドはニヤニヤ笑う。
ティルは観念した。

「テッドとした喧嘩が初めてした喧嘩だったんだ。今だって、喧嘩するのはテッドだけだよ。」
「ハァ?」
「同じぐらいの子は気を使ってくるし、大人は叱ってはくれるけど喧嘩とは違うし。」
ティルの視線はさ迷わせた。
「で?」
テッドは先を促す。話が見えなかった。
「今日、テッドさ、フッチとかルックとかと喧嘩してただろ。それが、ムカついただけ。」

それを聞いたとたん、テッドは爆笑した。
「お前かわいすぎ。」
「だから、言いたくなかったのに。」
テッドは爆笑したまま止まらない。
「テッドの馬鹿!」
ティルはぽかぽかとテッドを殴った。
それでもテッドの爆笑は晩御飯ができるまで止まらなかった。







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