バレンタインデー


1主→ティル

「テッド、いいもの出来たんだ。」
ティルがそう言う時にはロクナコトがない。
「なんだ?」
「納豆風チョコレートv」

…聞くんじゃなかった。

「それ、どうするんだ?」
気を取り直して聞いてみる。

「えっと、バレンタイン? 14日、楽しみにしててね。」
だから、可愛らしく小首を傾げるなって。

「パスだ、パス、パス、パス。」
「え〜、大丈夫、納豆風チョコレートだもんv あくまで、納豆風〜。」
何が大丈夫なのか、さっぱりワカラン。

「俺は食わねえぞ。」
「うーん、まあ作って誰も食べなかったらもったいないお化けがでるからなあ。」

少しだけ、俺はホッとした。

「予定は未定ってことで♪」

…胃薬用意しとくか。

◇◆◇

そして、当日・・・。

マクドール家の面々が顔を引きつらせているのは俺の見間違いではないだろう。
たぶん、全員納豆風チョコレートをプレゼントするという宣言をされたのだろう。

逃げても無駄だということは分かりきっている。
逃げれば、どんな目に会うか分かりやしない。

「はい、テッド。」
あいつはきらきらした目で俺にチョコレートを渡してきたのは夕方だった。
それまで、どれだけ胃を痛ませたか・・・。

どうやらテオ様やグレミオさんたちには渡し終えたらしい。

目の前で食べろ、とティルの目は言っていた。

「い、いただきます。」
引きつりながらも蓋を開ける。

納豆の独特のにおいと共に出てきたのは糸を引く納豆。

俺はわざわざついている割り箸を二つに割り、練らずに食べた。

味はチョコレート。においは納豆。しかも、糸を引く。
味もいっそ納豆にしてくれればどれほど良かったか・・・。

俺はやっとの思いで食べきった。
と、直後に世界は暗転した・・・。




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