とうぼう



本拠地のある湖のほとりをコロナはため息をつきながら歩いていた。
コロナはリムを奪還できなかった日から毎日のように抜け出していた。

いろんな問題はあったけれども、何より、あの時のリムの顔が忘れられなかった。

いろいろな仕事が終わった後、コロナは一人、本拠地を抜け出す。
あの頃は一人でいたい、と思ったことはなかった。

傍に誰かがいるのは当たり前だった。
傍に誰かがいてくれるのは当たり前だった。

ここから、王都まで抜け出して行きたい衝動に駆られる。
そんなことはできなくて、ただ、抜け出して、空想するだけなのである。

ふと、人の気配がして、振り返る。
「誰?」
「コロナおにいちゃん?」
そこには目を丸くしたティルがいた。

「何でここにいるんだ?」
ティルは基本的に本拠地の外へ出ることは禁止されているはずである。

ティルは逃げ出した。

子供の足だと油断していたら、意外に足が早く、コロナは少し本気を出した。
追いつきはしたが、右手で捕まえようとするとするリと抜けられる。
とっさに左手を出し、ようやく捕まえられた。

「どうして、ここにいるんだい?」
ティルは口を引き結んでいた。
言う気はないらしい。

たいていのところなら、行きたいといえばゲオルグが連れて行ってくれるはずである。
ゲオルグでも無理で、ティルも行ったことがある場所。

「ソルファレナ。」
思わずつぶやくと、ティルは一瞬、呼吸を止めて、目を大きく見開いた。

「僕のため?」
コロナがそう聞くと、ティルは、ばれたと思ったらしく、素直に頷いた。
「リムおねぇちゃんのこと、知りたいんでしょ?コロナおにいちゃんや、ゲオルグだったら無理だけど、僕だったらいけると思うんだ。」
そう言って、じっとティルはコロナを見上げる。

「モンスターが出たら、どうするつもりだったんだ!」
何より先に怒りがわいてきた。
それで、死んだりしたら、元も子もない。

「逃げるよ。」
半分泣きそうになりながら、それでも歯を食いしばって、ティルは言う。
「逃げられない時だってあるかもしれないんだぞ!」
「でも。」

「はーい、そこまでにしておきましょうねー。」
そうやって出てきたのはカイルだった。目立たない服を着て、彼も抜け出してきているようであった。
「王子だって、こっそり出てきてるんでしょー。もちろん俺もです。だから、みんなでこっそり帰りましょーねー。」

同じだった。コロナだって一人で出歩くのは危険だった。
モンスターだけでなく、幽界の門の暗殺者が来られたら、一人で勝てるかどうかは怪しかった。

周りが見えてないのはコロナも一緒だった。

「ごめん。」
コロナはティルとカイルに謝った。
「ごめんなさい。」
ティルも頭を下げる。
二人とも泣きたいようでありながら、それでも泣かないのは、意地っ張りという感じである。

「さぁさ、帰りましょ。それから、シュンミンちゃんにあったかい飲み物、入れてもらいましょ。」
そう言って、カイルはティルとコロナの頭をなで、本拠地へと促した。








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