やくそく
わすれていた。
コロナお兄ちゃんの大切な人が死んじゃったり、敵の方にいっちゃったこと。
リオンお姉ちゃんもまだ、怪我をして、お医者さんのとこにいる。
コロナお兄ちゃんは、だれかがいなくなっちゃうかもしれないことが、こわいんだと思う。
わすれちゃいけないことだった。
◇◆◇
シュンミンに暖かいココアを3人分入れてもらった後、コロナ、ティル、カイルはコロナの部屋に行くことにした。
この部屋に勝手に入ってくるものはいない。
ティルもコロナも固まっている。
「ティル君、お願いがあります。」
少し真剣な顔でカイルはティルに向く。カイルはティルを一人前に扱っていた。
「何があってもオレは王子を守ります。でも、ティル君は王子の傍にいててあげてください。この戦争が終わるまで。」
「ティルは赤月に帰る手はずがついたら帰るんだ!」
ティルが頷こうとする前に、コロナは否定した。
しかし、ティルはしっかり頷く。
「オレも、これで安心です。」
「カイル!!」
「ボクは、戦争が、終わるまでここにいる。」
ティルははっきりした言葉で言い、コロナを睨みつける。
「ダメだ。」
いつものコロナだったら、頭ごなしにそんなことを言うはずがない。
ティルが一人で出かけようとしていて、死にそうになる可能性があったことを知って、それで怯えているのだろう、とカイルは判断した。
「はいはい、王子、そこまで。ティル君、でも、約束があります。王子は最後までみんなが守ります。でも、ティル君のことはできるだけしか守れません。だから、危険なことはしないでください。」
ティルはこっくり頷いた。
「わかっています。父上もボクの命ちより、国を守ることをとりましたから。」
「では約束です。」
「はい。約束します。」
今さらながらにコロナは自分の立場が嫌になった。
生まれてずっと、守られて続ける人生に。
「どうかしたの?コロナおにいちゃん?」
「なんでもない。」
なんとなく、コロナが何を感じたか気づいたカイルが慌てて言う。
「王子はその代わり、私たちの未来に大切なものを返してくれるでしょ?そう信じているから、オレたちはあなたを守るんです。」
「ボクはコロナおにいちゃんのことまもれないよ。だってボクはまだ弱いもん。くやしいよ。」
ティルはじっとコロナを見る。
無力を感じているのは自分だけはないのだ。
自分にはできることがある。だから、カイルの言うとおり、できることで返さなくてはいけないのだ。
「わがままいって、ごめんなさい。でもね、ボクはコロナおにいちゃんのそばにいたいから。」
「ありがとう。」
コロナはティルとカイルに向かって言った。
「俺何かしましたっけ?」
カイルは、すっとぼける。ティルは自分が感謝されたとは気がついていないようだった。
「僕は君たちがいてくれるって信じているから。だから、カイルもティルも生きて傍にいてね。」
コロナの本心からの言葉に、ティルは勢いよく頷く。カイルも苦笑しながら頷いた。
「じゃぁ、乾杯しましょうよ?」
カイルのその提案にティルとコロナは乗り、冷めたココアが入ったコップで三人は乾杯したのだった。
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