すれちがい
1主→ティル 4主→カイ 5主→コロナ
カイは困っていた。
大体の場合、子供には好かれるのだが。
一度だけ、その少年は目を上げただけで、また伏せてしまった。
とりあえず、おまんじゅうを出してみる。
「これ食べない?」
◇◆◇
コロナはようやくスカルドとの話が終わって、王宮から出てきた。
「すみません、父が引き止めてしまって。」
ベルナデットが見送りに出る。スカルドも行きたがったが、まだ公務が済んでいないということで王宮に居残りという感じである。
何故だか、スカルドはコロナやリムびいきなところがある。
探偵の調査で、うすうす自分とスカルド、ベルナデットの関係を知ってしまった。
スカルドは父のようで、話をするのは楽しかった。
「楽しかったですよ。」
「それなら良かったです。ティル君を待たせてしまって、申し訳ありません。一緒に王宮に来てくださればよかったのに。」
「そう、ですね・・・」
「喧嘩しているなら、仲直りした方が良いですよ。ここで待っているので、仲直りしてきてください。」
ベルナデットはコロナとティルが微妙な関係になっていることに気がついていた。
何とかなって欲しいと、ベルナデットはコロナを焚きつける。
まるで、感情に鈍感なのはオベルの男どもに似ている、とベルナデットは思った。
◇◆◇
コロナが向かった先にはカイにおまんじゅうを差し出されているティルがいた。
コロナは誘拐かと思い、ティルに駆け寄る。
そして、三節棍を突き出した。
カイはひょいとよける。
それだけで、相手が強いことが分かる。
コロナは相手を正眼に相対し、三節棍を構えた。
そのコロナの服の裾をティルは引っ張った。
「コロナおにいちゃん、違うよ。その人は僕を心配してくれたんだ。」
ティルは慌てて止める。いつものような、幼い口調ではない。
「ティル?」
ティルははっとして、コロナを見た。
「また、気を使わせちゃったみたいだね。」
ティルがファレナにきた時はその年には似合わぬほど、大人びていた。
幼く、甘えた口調になったのはコロナや、リムや、リオンがティルのことを子供として扱ったからだろう。
ティルは求められる役割を演じ続けてきた。
「でも、僕の前ではティルのほんとの姿を見たいな。」
「僕もコロナおにいちゃんのそのまんまがいい。」
ティルとコロナは顔を見合わせた。そして、どちらかともなく笑い出す。
久しぶりのコロナの素の笑顔を見てティルは嬉しくなる。
「約束だよ。」
「ああ、約束だ。」
約束のことでいっぱいで、いつの間にかカイが消えていたことにすら、二人は気がつかなかった。
◇◆◇
「いらないおせっかいみたいだったね。」
カイは目を細めて、二人の様子を見ていた。
「ほら、まんじゅうだ。オベル特産らしい。」
そういいながら、テッドはカイにおまんじゅうの包みを渡した。
「ありがとv」
カイはテッドにおまんじゅうをもらって、すっかり今あったことを忘れてしまった。
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