彼のいない日
1主→ティル
同盟軍本拠地は静かな夜を迎えていた。
ナナミちゃんが死んだ、その衝撃が城中にめぐっていた。
約束の石版の前で、ルックは寄りかかっていた。
「眠れないって顔をしている。」
そういいながら、ティルはルックの前にやってきた。
「何か用?」
「ただの散歩だよ。ねぇ、君は知っているんでしょ?」
ティルは、ナナミちゃんが生きていること、と、声を出さず、口を動かすだけででルックに言う。
ルックは方眉を上げた。
「それが?」
「イヤー。なら何を悩んでいるのかなって思って。」
「君にいう必要はないよ。」
「悩んでいるってことは否定しないんだ。」
ティルはルックの目を覗き込んで言う。
すべてを見通しそうな目、これが曲者だということをルックはよく知っていた。
「君には関係ないよ。君も、干渉されることが嫌いなくせに。」
「僕はいいの。」
「どんな理論だよ。」
あきれ果てたようにルックは言う。
結局、お互いの隠していたいことは隠されたまま、終わったのだった。
◇◆◇
もし、あの時彼を問い詰めて、吐かせられたら、変わっていただろうか?
もう今となってはわからない。
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