にせもの


坊→ティル、5主→コロナ


「ティル。」
そう言って、コロナの姿をした、ロイは抱きついてみた。

ティルは振り返る。

「ロイおにいちゃん?」
「あー、何でばれんだよ。」
「だって、ロイおにいちゃんの声だし。」
ティルはにこっと笑う。

「そこんとこ、詳しく教えてくんねぇ?」

「んーとね、ロイおにいちゃんは声に自信があるの。」
「ってことは、僕にはないの?」
「おわ、コロナ!」
いきなり沸いて出たコロナにロイは驚く。

「ロイ、また、いたずらしにきたの?」
「うっ。」
「まぁ、面白いからいいけどね。」
って、いいのかよ、おい!とロイは突っ込む。

「だって、何かあったときでも、ロイのせいにできるし。」
「俺のせいにするつもりか?」
「日ごろの行いの差だよね。」
コロナの笑みにロイはどっと疲れた。

「コロナおにいちゃんは強いねぇ。」
「それよりさ、ロイの声に自信がある、ってとこ、教えてほしいな。」
「ロイおにいちゃんはね、自信があってね、コロナおにいちゃんはね、優しいの。どんなにロイおにいちゃんが演技していてもね、絶対ばれない、って声をしてるの。」
「そんなもんかなぁ?」
ロイは首をかしげる。

「ね、ロイ、なんでそんなことを聞きたかったの?」
コロナはニヤニヤして言った。
ロイがリオンに思いを寄せていることをコロナは知っている。
そして、彼女は絶対、ロイとコロナを見分けることを考え合わせれば、すぐに分かる。

「リオンおねーちゃんのことが、好きなんだよね。いつも、ロイおにいちゃんリオンのねーちゃんの前だと、ある自信がないもん。」
「それは余裕って言うんだよ。」
「よゆう?」
「ん、な、んなことねぇよ。」
分かっていてからかっているコロナはともかく、純真さで直球を投げてくるティルに、ロイはあせる。

「ごめんね。ぼくのロイおにいちゃんとコロナおにいちゃんの見わけかたとリオンおねーちゃんの見わけかた、違うと思うの。」
「だから、んな、理由で聞いたんじゃねぇよ。」
「どうかな?」
「え?違うの?」
「違うっていってんだろうが。」
その後、ロイは延々と否定し続けたが、コロナとティルが納得することはなかった。









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