みらい
今日も、軍による話し合いが終わった。
ルクレティアは今日、決まったことを、書類にまとめていく。
そこに、ティルが来た。
丁寧に叩かれた扉の音に、ルクレティアは入室を促す。
「失礼します。聞きたいことがあるんだけど、いま、いいですか?」
「はい、どうぞ。」
おずおずと聞いてきたティルにルクレティアは微笑んだ。
「いろんなこと、みんなで、話しあって、決めているんだよね。」
政治のことを聞いてくるとは思わず、ルクレティアは一瞬、戸惑ったものの、ゆったりと頷いた。
「そうですよ。」
「この戦争がおきる前は、貴族たちが、おさめていたよね。」
「ええ。」
「なんで、こうしたの?ボクのとこも貴族政だけど、どんないいところがあるの?」
ティルの目は真剣である。
いつもより、ティルの表情は年上に見える。
ルクレティアは、きちんとと答えることにした。
「民の声が聞こえやすい、という利点はあります。それ以上に、戦争が終わった後、街の議長による政治を行うためですよ。今、こうすることで、政治をとるシミュレーションをしているのですよ。」
少しティルは考え込む。
しばらくして、ティルは頷いた。
難しい言葉を使いすぎたかと思ったがティルは理解したようだった。
「なんで、まちのぎちょうに政治をさせようと、思ったの?」
「彼らが力を持っているからです。貴族を潰した後、兵や食料を持っているのは彼らですから。」
ルクレティアの言葉に、ふうん、とティルは頷く。
「国が弱かったらまわりの国からせめられちゃうものね。」
「その点、この国はラッキーでした。周りから攻められる可能性が低いのですから。」
「もし、まわりの国が強かったらどうしていたの?」
ティルは首をかしげて聞いてきた。
どこまで言うべきか、ルクレティアは一瞬考え込んだ。
「貴族を取り込むか…もしかしたら、私はこちらにはいなかったかも知れません。」
そう言って、ルクレティアは微笑んだ。
ティルの反応を確かめる。
ティルは別段、こちらの軍にいないかも知れないということには気にも止めなかったようである。
「ルクレティアさんは、この戦争が終わったらどこかに行くんでしょう?だから、今から、シミュレーションしているんでしょ?」
「ええ。」
ティルの勘のよさにルクレティアは驚く。
「赤月帝国に来ない?」
あの答えを聞いて、なおかつ、誘いをかけてくるとは、なかなか、将来が楽しみだ、とルクレティアは思った。
「私は、流れるままですから。」
「ざんねんです。」
ティルは本当に、残念そうな顔をした。
「また、いつか、機会があれば。」
「うん。あと、まだ、ききたいことがあるんだ。」
「なんですか?」
「このまえの、さくせんなんだけど…。」
子供ながらに、的をついてくる質問に、ルクレティアは的確に答えていった。
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