おかえりなさい


大切な人が一人、また一人と消えていく。

だからと言って歩みを止めることはできない。
いや、止まることができない。

歩みを止めてしまえば、歩けなくなる可能性がある。
それを完全に否定できない自分の弱さがある。

だから歩みを止めることはしない。
それでもふと歩みの速度が落ちてしまうことがある。

それはオデッサが、グレミオが、そして父が死んだとき。
だからこそ自分はあぁ、人だったんだなと自覚する。

そして今また、テッドが死んだ。
大切な人は、一人、また一人と消えていく。
止まらない連鎖。消えていく笑顔。

何事もなかったように笑う顔。
それでも自分では引きつっていることを自覚する。
誰かが気づくとは思えないけど、それでも自然に笑えるようになりたい、そう思う。

本拠地に戻ってきて、まず顔を会わすのは瞬きの鏡の前にいるヘリオンとビッキー。
「おかえりなさい。」
満面の笑みで言われたビッキーの言葉に自然にこっちも笑みが浮かぶ。
「ただいま。」

それは繰り返し。
何度も引きつった笑い方しかできなくなって、笑うことを忘れた。
でも、本拠地に帰ってきて、彼女の自然な笑みをみて、無意識のうちに笑い、そうして笑い方を思い出した。
何度も、何度も。

彼女の笑みに泣きそうになることもある。
それでも、僕は笑みを返す。

たぶん、歩みを止めても再び歩き出せるだろう。
彼女の笑みを守りたいから。

だから、歩みを止めることはしない。
彼女のたくさんの笑顔が好きだから。みんなの笑顔が好きだから。

だから今日も僕は歩き続ける。
この笑顔を失わないように。


back