一人


気づいたときは一人、だった。
生まれてすぐ、海に流され、漂着したらしい。
産着は高級で、俺はふっくらとしていていたらしい。
孤児院では同じような境遇のやつはいなかった。
たいていは親を亡くしたとか、気づいた時にはストレートチルドレンだった奴ばっかりだ。

だから、と言うわけではないが疎外感、と言うものが常にどこかにあった。
特に同学年の子供と付き合うのが苦痛だった。

「いい子ちゃん」
そういわれることもあった。
飯を食べさせてもらうんだから仕事をするのは当たり前だと思うんだが、孤児院の子供は、特に男子は仕事を真面目にする俺を嫌っていた。

いつも黙々と仕事をする。
どんなにきつく、ひもじくても。

だから「いい子ちゃん」で、仲間に入れてもらえなかった。

◇◆◇

しばらくして俺はとある家に引き取られることになった。
漂着したときに産着がよいものだったこと、働き者であること、そして見目がいいところから選ばれたらしい。

施設の大人はそういうことを平気で言う。
子供が傷つこうがお構いなしだ。

それでも俺は反発することなく、ただ黙ってそれを聞いていた。

◇◆◇

「これから、私の息子の「スノウ」についていろいろと学びなさい。」
そう言われて初めてスノウを正面から見た。
はっきり言って、興味はなかった。

「はじめまして。えっと、僕はスノウ。」
「あ、カイです。」
にっこり笑ったスノウの純真な笑顔が眩しいと思った。

このお坊ちゃんは闇、を知らないんだろうと思った。

「ねぇ、パパ、カイ君と遊んできていい?」
「あぁ、遊んできなさい。」
スノウは俺の手を取り、行こう、と言った。

「今日から親友だからね。」
そうスノウは俺に言った。普通の友人とは少し違うのは分かっていたが、それでも初めてできた友人だった。

◇◆◇

疎外感はなくならなかった。
やっぱりスノウはお貴族様で、俺は平民だ。

でも、スノウは俺を必要としてくれる。だから、俺はスノウのそばにいることにした。

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