絆
「生きなきゃいけねぇぞ。」
ダリオがナレオに言った言葉だ。
親から子へ伝えられる言葉。その言葉を決戦直前に聞いたとき、カイはうらやましく思った。
ダリオとナレオの親子は仲がよかった。
それは、うらやましいぐらいに。特に、家族がいない、カイにとっては。
目安箱に入っていたルイーズからの手紙。
そこには絶句するようなことが書かれていた。
ナレオの母がルイーズであることと、
そして、 彼の父親がダリオじゃないと言うこと。
すごく親子としてナチュラルだから、似ていなくても母親がすごくきれいなんだろうな、としか思わなかった。
ナレオが母が誰か気にしていることは手紙をもらって知っていた。
でも、いえるわけが無かった。
◇◆◇
それからしばらくが経って、キーンにリノからの伝言を届けに行った。
キーンはカイにそこにたった一つあったイスを勧めた。
何がなんだか分からなかった。
ここは懺悔室、と思い出したのは誰かが入ってきたときだった。
そしてその告白は始まった。
ナレオはルイーズが連れてきた、とその影はいった。
呆然として、ダリオらしきその言葉を聞いた。
その時、響いた言葉。
「ナリオは俺の子だ。いまさら渡せねぇ。」
当たり前だがそれから何が変わるわけでもなく、日々は過ぎていった。
ナリオはダリオの子供であり、ルイーズの子供ではなかった。
ただ、うらやましかった。
「ナリオは俺の子だ。いまさら渡せねぇ。」
心の奥底から告げられた言葉。
親、と言うものはこういう風なのかな、とも思う。
多分、自分は家族が、特に父親が欲しかったのだろうと思う。
そうしてカイは覚えていない父親のことに思いを向けたのだった。
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