追悼
ソルファレナの堤防ではビーバーたちやドワーフたち、そして人間が協力して堰を作り直していた。
ファレナの大きく広がる河は慈愛を意味する。
その重さにコロナは押しつぶされそうになる。
遠くから二つの人影が見えた。
「あら、こんなところにいたのですか。」
そう声をかけてきたのはルクレティア。
その横にはゲオルグがいた。
「何かあった?」
何気ないフリをしてコロナはルクレティアに尋ねる。
「いえ、急ぐことは何も。ここに来たのは王子たちと同じことを考えてだと思いますよ。」
そう言って、ルクレティアはふふふ、と笑った。
「まぁ、俺たちは素直になれない性格らしい。」
ゲオルグはいつもの通りのように見える。
ここはサイアリーズが死んだ場所だった。
墓は別にある。
それでも墓参りは柄じゃない、とか何とか理由をつけて、3人はこの場所に追悼に来たのだった。
「いまでも、許せませんか?」
ルクレティアの言葉にコロナは首を振った。
「許せなかったわけじゃない。ただな・・・。」
ゲオルグはそう言って言葉を切る。
もしあの時、リムを奪還できていれば、戦争は終わり、死ぬ人の数は減っていただろう。
たとえ、元老院が強い力を持っていたとしても。
必要とあれば、泥をかぶる覚悟はできていた。
できるだけ、人が死ぬことを避けたかった。
叔母はコロナたちが被るはずだった泥を一人で受けることにした。
知らなくていい、叔母はそういったけれど、それほど自分はきれいじゃないし、戦争を長引かせる結果になったのは間違っていると思う。
許せない、そんな感情を伴っていたころもあるけれど、今は自分が情けなかった。
「そうあれこれ悩むな。お前にはまだやるべきことがあるんだろう?」
サイアリーズのことで悩むコロナにゲオルグはそういった。
ゲオルグ自身、コロナたちの心を傷つけたサイアリーズに関しては複雑な心情をもてあましている。
「そうですね、とりあえず太陽の紋章を取り返してしまいましょう。」
ルクレティアはゲオルグに同調するように言った。
「今は前だけを見ておけ。」
ゲオルグその言葉にコロナは素直に頷いた。
三人は思いのうちを秘め、太陽宮へと歩みだした。
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