散りさった思い
ソルファレナも奪還し、久しぶりに太陽宮へと戻った。
まだ、太陽の紋章は見つかっていないけれども、たぶん、これで戦争は終わりだろう。
でも、まだ、リムには笑顔が戻っていない。
最後のギゼルの言葉がまだリムに残っているのだろう。
コロナはリムの部屋へといった。
「あにうえ、どうかしたのじゃ?」
そういいながら、リムスレーアはコロナに笑いかけてきた。まだ、口元は引きつっている。
しかも、以前のように抱きついてこない。
まだ、戴冠式はしていない、そう言うことにはなっていたが、リムスレーアはもう女王としていかなければならなかった。
コロナは従者たちに部屋から出て行ってもらえるよう合図した。
従者たちはおとなしく出て行く。
誰もいなくなったのを確かめて、リムスレーアはコロナに寄り添った。
リムスレーアにとって、今はコロナとハスワールだけが素直に甘えられる相手だった。
コロナは母がしてくれたようにリムスレーアを抱きしめた。
幽界の門が襲撃する前、母が自分を抱きしめてくれたのも、誰もいない時だった。
「リムは、ギゼルのこと好きだった?」
「そんなわけあるわけなかろう。」
コロナの問いにリムスレーアは首を振る。
「じゃぁ、ギゼルのこときらいだった?」
リムスレーアは何か言おうとしてつまる。
「あにうえは卑怯じゃ。」
「ごめん。」
コロナは素直に謝る。
リムスレーアは下唇をかんだ。
「わらわはあやつのことを忘れぬ。それだけじゃ。」
リムスレーアはギゼルのことが嫌いじゃなかった。でも、それを言うわけにはいかなかった。
コロナはリムスレーアの頭をなでる。
「じゃぁ、僕にもギゼルのこと教えて。リムが見たこと全部。」
コロナの言葉にリムスレーアは迷った末、頷いた。
ポツリ、ポツリとリムスレーアはギゼルのことを語りだした。
リムスレーア以外に覚えているものはいなくなるのが、悲しかった。誰かにギゼルのことを覚えいて欲しかった。
◇◆◇
すべて話し終えると明け方近くになっていた。
それでも、リムスレーアは途中で中断することを嫌がった。
すべてが話終わった時、リムスレーアはほっとしたように笑ったのだった。
「僕も、ギゼルのことは忘れない。リムが言ったことも全部。」
「あにうえ、わらわは・・・。」
「寝た方がいいよ。ぐっすり眠ってしっかり食べて、それから考えた方がいい。そう、教えてくれた子がいたんだ。」
「そうじゃな。」
コロナは「おやすみ。」と告げ、リムスレーアの部屋から出た。
部屋の外にはルクレティアがいた。
「王子、罪悪感からではないですよね。」
「あぁ。」
「ならいいんですよ。」
ルクレティアはリムスレーアが親政を掲げた時、最悪の場合、コロナがリムを討つ覚悟をしていたのを知っていた。
その罪悪感が残っていることも。
コロナは真実リムのために助けになりたい、ギゼルのことを知りたい、そう思ったからリムスレーアにギゼルのことを尋ねたのだった。
ルクレティアはコロナのその思いを感じ取った。
「じゃぁ、王子も早く寝ましょうね。明日はこき使っちゃいますから。」
くるくす笑いながら茶化すように言われ、コロナは笑った。ルクレティアの心遣いがありがたかった。
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