エスケープ・ゴート
5主→コロナ
ロイが倉庫になっている部屋に入ると、そこに先客がいて、ロイはぎょっとした。
しかしそれが、コロナとわかると、ほっと息を吐いた。
「王子様がなんでこんなとこいるんだ?」
「ロイこそ。」
使われていないこの倉庫にお互い用事があってきたとは思えない。
とはいえ、ロイは気にしないことにした。
ヘタに痛い腹を探られたくない。
コロナもロイを不審な目で見たが、今は隠れることにいっぱいだった。
と、そこへ、ミアキスの声が聞こえた。
「王子〜、諦めて女装しましょうよ〜。」
瞬時にロイはコロナの置かれている状況を悟った。
「あんたも大変だな。」
コロナはロイの口を慌ててふさいだが、ミアキスはロイの声を聞き逃さなかった。
ばたん、という音がして、倉庫の扉が開かれ、手に女装セットを持っているミアキスが現れた。
「ここですねぇ、見つけましたよぅ。」
コロナは、ロイを恨みがましい視線で見た。
ロイは目を逸らす。わりぃ、と思ったが、認めるのは癪だった。
コロナはミアキスに攻められ、じりじりと後ずさる。
ただでさえ、女顔といわれているのに女装なんてごめんだった。
壁まで追い詰められた時、リオンの声が聞こえてきた。
「ロイ君、どこですか!また、王子の振りして、いたずらしましたね!」
コロナはロイを見る。
ロイはリオンにばらされることを覚悟した。
コロナはにっこり笑って、ミアキスのほうを向いた。
「ロイだって、リムみたいになるんじゃない?僕に似ているし、髪も茶色だし、なにより、ヒマみたいだし。」
ヒマ、というところにアクセントを強くおいて、コロナは言った。
ミアキスも、ぽん、と手を打つ。
「いい考えです。」
その言葉にロイは焦る。
「な、なんで俺が!!!!」
「騒ぐとリオンが来ちゃうよ。リオンには見られたくないだろ?」
ロイはコロナに黒い角と尻尾がはえているように思えた。
「今度、僕の姿でいたずらしたら女装した姿、リオンに見て貰うからね。」
相変わらず、コロナは人の食えない顔で言った。
ロイは逃亡を試みたが、手はがしっとミアキスにつかまれていた。
「ミアキス、10分後に来るから女装、終わらせといてね。それまでに仕事片付けるから。」
「楽しみしていてくださいねぇ。」
それからしばらくの間、ロイのいたずらは激減したのだった・・・・・。
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