力のある処
4主→カイ 5主→コロナ
難破船の吹き溜まりは寂しいところであった。
たくさんの死があるように思えた。
コロナはふと振り返る。
誰かが後ろをつけているような気がしたからだ。
誰もいない。
しかし、こっそりとコロナたちの船から降りてきた人影がいたのだった。
コロナとヤールとベルナデットとネリスは難破船の吹き溜まりの奥へと向かった。
そして紋章砲を見つけたのだった。
◇◆◇
それを影から見守っている者が2人いた。
黒髪の少年は武器を手に今にも飛び出しそうである。
対する茶色の髪の少年は黒髪の少年を止めていた。
「何で止めるんだ?」
キリルは腹立ちそうに言う。
なんとしてでも、紋章砲を壊す、それがキリルの本懐だった。
カイはそんなキリルを引き止めたのである。
「彼らに選択肢を上げようと思って。」
カイの言葉にキリルは首をかしげた。
そのとき、タツノオトシゴのでかい奴が海から出てきた。
キリルとカイは武器を構え、いつでも助太刀に入れるようにする。
コロナたちも気を引き締めているようだった。
なんとかコロナたちはタツノオトシゴのでかい奴を退けた。
しかし、まだ、そのでかい奴は生きていた。
カイは左手を上げようとした。
それよりも早く、紋章砲の弾が飛び出した。
◇◆◇
結局、コロナたちは紋章砲をつぶすことにした。
「ごめん。紋章砲が発射されるとは思わなくて。」
カイはキリルに謝った。本当なら、発射されることがあってはならない。
「いいって。結局、なくなったんだしな。」
コロナたちの選択をキリルは良い気持ちで見ていた。
昔、オベルの王様や海賊たちが不利になると分かっていても、紋章砲を捨てるという決意をした。
強い力を捨てるだけの強い意志を持って。
「なぁ、もう少しあいつらを見てみないか?」
紋章砲の弾の情報は今のところこれっきりで時間は余っている。
キリルはコロナたちに興味を持った。
「そうだね。ま、ここで声をかけるわけにはいかないけどね。」
カイは頷いた。さすがに密航してきたことはいえないから、話しかけるのは陸に戻ってからになるだろうけど。
「じゃぁ、決まりだな。」
キリルはにやりと笑った。
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